嵐の中の母子像―ミュージアムで逢える彫刻作品
「国際平和ミュージアムだより」Vol.1-31994年3月20日
立命館大学国際平和ミュージアムには、「わだつみ像」のほかにも、いくつかの彫刻作品が置かれています。いずれも「わだつみ像」の作者である本郷新氏の作品です。
「嵐の中の母子像」は戦火にもっとも縁遠いはずの母と子が、戦火のなかで傷つき死んでいったことを思い制作されたものです。ふたりのこども(ひとりはまだ赤ん坊です)を必死で守りながら、嵐の中を突き進んでいく母親。赤ん坊は右手にしっかり抱きかかえられ、うしろから背中にかじりついているもうひとりのこどもには左手がさしのべられています。母親のその太く大きな手足がとても印象的な作品です。(現在、「嵐の中の母子像」はびわこ・くさつキャンパスに移設され、毎年12月に、像前で「不戦の集い」が開催されています。)
また、2階のギャラリーには、小品3点がおかれています。紛争の渦中で、悲惨な状況に追い込まれた無辜=何の罪もない民衆のすがたをモチーフ制作された作者晩年の代表作です。抑圧されうめき苦しむ人間の姿が、静かに、けれども強烈に、胸にせまります。