恩賜の短剣
1939(昭和14)年10月

鞘の根元にあるボタンのような部品は「駐爪(ちゅうそう)」といい、刀身が不意に抜け落ちることを防ぐためのストッパーの役割を果たす。ここを押し込むことでロックが外れ、刀身を引き抜くことができる。

ミュージアムに寄贈いただく資料は、それぞれが様々な背景を持っています。この短剣の元々の所有者は斉藤一好さんという方です。一好さんは1938(昭和13)年に海軍兵学校に入学し、3年後の1941年にご卒業されました。当時、海軍兵学校を優秀な成績で卒業した人には天皇から短剣が贈られることになっており、これは一好さんが卒業時にいただいたものです。
兵学校卒業後は戦艦の乗組員として配属され、日米開戦を迎えます。その後、転属して潜水艦の乗組員となり、特攻攻撃に向かう直前に終戦を迎えました。終戦後、復員した一好さんはご自身の戦争体験から、「戦争と平和」に関心を持ち、弁護士の道を歩みました。二度とあんな戦争を起こしてはならないという思いから、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を胸に、平和についての活動にも熱心に取り組まれました。
一好さんのご自宅で長年大切に保管されていたこの短剣は、今年ミュージアムへ寄贈されました。日本が戦争ムードに染まっていく過程をその目で見つめた若き日の一好青年は、どのような思いでこの短剣を受け取ったのでしょうか。

学芸員 篠田祐磨

参考資料

参考資料:海軍兵学校時代の一好さん
斉藤一好『一海軍士官の太平洋戦争等身大で語る戦争の真実』(高文研、2001年)より